気持ち悪いものを見てしまったという感覚が止まらない。
さっきまで生きていて、同じ顔になってたから区別はつかないけど、確かにあの集団にいた一人の筈。

放課後の帰り道は夕日が射していたけど、その明るい中に自分がいる事にすらも疑問を感じた。



歩いていると、少し先に、同じクラスで比較的仲が良い男子生徒を見かけた。
彼は流行の顔に整形していないので、見分ける事が出来た。

私は、話していれば気分も紛れると思い、声をかけてみたら、私が追いつくまで待ってくれた。
他愛もない話をする。器用に整形の話題だけを避ける。


突然、彼から頬にキスされ、耳元で「好きだよ」と言われた。
私が振り向くとすぐ近くに居て、あまりの近さに驚いた。

そのまま返事を素直に返すのも何だか癪だから、「どう想ってるのかあててみてよ」とはぐらかす。
私は器用にガードレールの上を綱渡りするように歩き、彼から少し距離を取りつつ、彼が私の本心をあてるのを待った。
…しかし、三分待っても、五分待っても、彼は考え続けている。

本当は、彼の答えを待つ必要なんて無かったんだ。
無闇に距離を取る必要も無かった。





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