兄貴がミカエルになるとき

「このためだったのか」

ママがきょとんとする。

「このためって、何のため?」

本気で日本に来いなどといった覚えのないママは訳がわからず、なにやら一人興奮しているリチャードを怪訝な顔で見た。

「君は僕とサキを会わせたかったんだね」

なぜ? 
どうして?

ママだけではなく、玄関に並ぶ家族全員の頭の中を「?」が泳いでいた。

リチャードの言っている意味が誰も理解できないがゆえに、だれも言葉を発することもできず、玄関先でのリチャードの独り舞台が続く。

「ぴったりだよ。アキのカンはさすがだね」

「?」は、もはや家族の頭の中からからあちらこちらに飛び出して、そこらへんに浮遊していた。

「私のカンがさすがだというのはわかるけど、いったい何がぴったりなのか、全然わからないんだけど」

「それじゃ全然さすがな勘じゃないじゃないか」

パパがもっともなことを言う。

「まさか、リチャードのイメージに咲季がぴったりだとか……」

いつも確信を持って言葉を発するトオ兄が、小さな声でしょぼしょぼつぶやく。