兄貴がミカエルになるとき

「咲季」

もう一度名前を呼ばれて、思い出の中から意識が春の夜に戻ってきた。

「何?」

まだふわふわした気持ちのなかで、私は聞き返す。

「咲季が高校を卒業するまで、マネージャーとしてお前を守ってやる。だから好きなように好きなところに飛んでいけ。それまではそばにいて、いつでもどこにいても、咲季がつまずかないよう、傷つかないよう見守っているから」


「君は蝶で、僕はそれを追いかけたくても追いかけられない花みたいな存在かな――」

お茶を飲む以外になかなか進展しない友達の関係を揶揄して、いつか三品君が言っていたキザな言葉を思い出す。

「それなら僕は、甘い蜜をたっぷり貯めて君を誘うから――とも言っていた。

男子なのに自分を花に例えるなんて変だなと思いながらも、彼が花ならどんな花だろうと想像した。

その時思い浮かんだのは、男っぽくないけれど、赤いポピーやユリだった。