兄貴がミカエルになるとき

「家まで送っていく」という申し出を断って、三品君と駅前で別れた。

家に戻るとリビングには先に帰っていったはずの幸ちゃんがいた。

「咲季ちゃん、お帰り。トオルさんに会いに突然立ち寄っちゃった。わからなかった物理の方程式を見てもらってたんだけど、すごい速さで解いちゃうの。まるでガリレオの湯川教授みたい。しびれる」と言って、トオ兄をうっとり見つめる。

その視線を受けて、「幸男こそ高1でその方程式に興味があるなんて、すごいな」と互いを褒め称え、次に私に視線を移し、「ママは先にでかけた。おれたちは五時に家を出る。幸男はその時一緒に送ってってやるから」と、準備を促した。

リビングの壁にかかった時計を見るとすでに4時半になっていた。予定していたよりも長い時間三品君と話してしまった。

私がトオ兄の話を必要以上に話し続けたせいだ。

慌てて部屋に戻り、自慢話をしすぎた後の心地悪さに大きく息をついた後、制服を脱いだ。

ストレートのジーンズに長袖のTシャツ、薄手のセーターをかぶって着替えを済ませ、トートバックに携帯電話とお財布だけ投げ込んで幸ちゃんとトオ兄のところに戻っていった。