その日、学校から家に戻ると、またリチャードとティムさんがうちにいた。

今度はサプライズではなく、撮影の打ち合わせをしていたという。

仕事の内容はまずマネージャーであるトオ兄に通され、それから私におりてくる。

明日は来日しているスタッフ全員を交えての打ち合わせがあるので、その前の下準備というわけだ。

「おかえり」

リチャードの日本語は日に日に流暢になっていく。

「シェリルのショーに来ていた男子もパパの学校だって? すごい偶然だね」

ギーコ、ギーコと、パパお気に入りのロッキングチェアを揺らしながらリチャードが言う。

「うん、面倒くさいことになってる」

多少イヤミを込めてトオ兄をチラ見しながらそう返事をしたが、私の声はトオ兄の鼓膜だけは素通りしたようで、腕を組んで何かひとしきり考えている。