プリンを手にトオ兄は私をじっと見つめ、膝の上のモンモンはそのプリンを見つめ、いつ自分の口に注ぎ込まれるのかと全神経を集中している。

モンモンの口元から涎が垂れている。

「恋心が存在しない友達関係なら一緒にお茶を飲んでも映画に行っても、デートとは言わないんじゃない」

うんうん、と隣でパパがうなずく。

「咲季に分がある。東大理工学部のトオルにしてはまるきり説得力のない私情に歪んだ理論だな」

しびれを切らしたモンモンが、とうとうとお兄のプリンのカップに口を突っ込んだ。

でもトオ兄は気付かない。

「トオル」

パパが目で合図するが、トオ兄は私を見たままだ。

「トオル」、ともう一度呼びかけるが、やはり応えない。

パパは少しの間トオ兄を、いやトオ兄のプリンを凝視して残念そうにつぶやいた。

「あーあ、お前のプリン、モンモンが全部食っちまったぞ」