兄貴がミカエルになるとき

「前に駅前で本を落としたんだけど、そのときたまたま側に三品君がいたらしい。私が落とした本を彼も読んでいて、そんな本を読む高校性がほかにいるのかと驚いて気になっていたんだって」

「まどろっこしい説明だが、つまり変わった本の趣味が一緒だから興味を抱いたということか」

「そんな感じ」

「なんの本だ?」

「『なまこの素晴らしき生体』と『ハチが消え、人がいなくなる未来』」

「それは俺がお前に勧めた本で、どちらも素晴らしい本だ。別に変った趣味じゃない」

「もっとすごいのは、今彼が読もうとしている本が「これが見納め―― 絶滅危惧の生きものたち、最後の光景」と「蝦蟇の油」。これも前にトオ兄が勧めてくれて読んだ本。だから、私じゃなくてトオ兄が友達になったほうがいいよね」

トオ兄の無言の視線を避けて、テーブルの上に手つかずに置かれたままの黄金プリンの蓋をめくった。

その音と匂いに膝の上で寝ていたはずのモンモンがとっさにガバリと顔をあげた。

食べ物に関してだけは猫にも勝って俊敏だ。

目の前の黄金プリンを見下ろしてから、トオ兄が私に視線を戻す。