兄貴がミカエルになるとき

「黒澤明の映画、好きなの?」

「最近ね。父さんがすごいすごいって大絶賛するんだよ。映画好きを語るなら黒澤を見ろって。で、洗脳されてちょっとしたマイ黒澤ブーム」

やばい。三品君のお父さんとも気が合ってしまうかもしれない。

「あれ、希沙良さんも黒澤監督好き?」

好きどころか、私もトオ兄も日本で一番好きな監督だ。

DVDは全作品2人で揃え、といっても椿三十郎以外は全部トオ兄が買ったものだけど、週末の夜にはしょっちゅう見直し、見るたびにその面白さに感激している。

「あなたのお父さん以上に好きかもしれない」と、私は答えた。

三品君の瞼がちょっと上がった。意外だったらしい。

「じゃあ、この本も読んだ?」

「両方、読んだ。」

え、と声を出さずに三品君が口を開けて驚いている。