兄貴がミカエルになるとき

今いる場所がよくわからないので答えに困っていると「早く戻ってこい。幸男が駅で待っている」と言って電話が切れた。

まるでしつけに厳しいお父さんのようだ。

「また逃げないでよ」

気配を察したのか、そう言って彼にしては気弱な笑顔を見せた。

そういえば最初に待ち伏せされた時もこの前も、彼の前から走って逃げたのだった。

「ごめん、でも帰らないと」

「じゃあ車が近くで待ってるはずだから送っていくよ。家はどこ?」

さすが、社長の御曹司だ。どうやら毎日車で登下校しているらしい。

「友達が駅で待っているからいい。でも、ここってどこ?」

私は辺りを見回した。三品君と一緒に走ってきたけど、どこをどうきたのかさっぱりわからない。自慢じゃないけど、馬鹿と言われても腹が立たないほどに方向音痴で道を覚えられない。