兄貴がミカエルになるとき

「入学したての頃、駅の前で君が本を落とした姿を見たんだ。すぐそばにいたから、道路に落ちた本がはっきり見えた。同じ本を読んでいたからびっくりしたんだ。あんな本を読んでいる友達、僕の周りにはいなかったから」

私は4月まで記憶をさかのぼってみた。

確かに本を落としたことがある。あの時はトオ兄に借りた本を持ち歩いていた。

駅まで歩いているうちにどうしても続きが読みたくなって、2冊ともカバンから出して交互に見ながら歩いていた。

そしたら電柱に肩をぶつけて本を落としてしまった。

トオ兄の本を傷つけたんじゃないかと焦って、慌てて拾い上げたんだっけ。

「あの本は……」

「なまこの素晴らしき生体」と『ハチが消え、人がいなくなる未来』」

三品君が顔をほころばせる。