兄貴がミカエルになるとき

「季咲良さん」と呼ばれ、正面から近づいてきた彼を無視して通り過ぎようとした瞬間、左手を握られ引き寄せられた。

「ちょっと……」

そう声を出したのは私ではなく、隣にいた幸ちゃんだった。

「走って」
三品君はそういって私の手を握って駆け出した。

「え、なんで?」

「いいから走って!」

私の問いには答えず三品君は私の手を引いて、駅とは逆方向に走り出した。

学校帰りのほとんどの生徒と逆行して走り行く私たちを皆が振り返る。

幸ちゃんと美奈ちゃんはあっけにとられたままで追いかけてくる気配はない。

三品君は私の手をしっかり握ったまま走り続け、最近全速力で走ることのなかった私はすぐに息切れがして脚がもつれた。