兄貴がミカエルになるとき

「というわけで大変だったんだよ」

学校から戻ると、リビングのソファでモンモンをはべらせ、寝転びながら分厚い本を読んでいたトオ兄に訴えた。

「そいつ、追いかけてはこなかった?」
トオ兄は読んでいた分厚く重そうな本を胸に下ろした。

「来なかったし、もう姿を現さないと思うけど」

「よし、お前にしてはよくやった。それもなかなか胸に刺さる理論だ」

「でもさ、本当はシャイラなのに嘘をいって相手を非難するなんて卑怯だよ」

ひとつ嘘をつくとその嘘を隠すためにまた嘘をつく。

これからも嘘をつき続けるのかと思うと気が重くなった。

「もうお前は何も言わなくていいよ。今度その男子が待ち伏せしてたらすぐに俺に電話しろ、いいな」

トオ兄は寝転んだままの姿勢で手を伸ばし、フロアに座ってソファに体をもたせかけていた私の髪をくしゃりとなでた。