9月10日。

新学期が始まった。

気温は30度を超えて真夏のような暑さを保っていたが、それでもどことなく空気の肌触りが違う。

真っ青な体に大きな白い雲を浮かべていつも陽気だった空がどこか素っ気ない。

楽しい映画が終わってしまった後に流れるテロップシーンみたいだ。

夏が終わるときはきまって寂しくなる。
どこも開け放たれていた窓が、気付けば少しずつ閉じられていき、賑やかなおしゃべりが聞こえなくなっていく感じ。

いつもいつもこの季節に馴染むまで、私の心はあきらめの悪い子供のように、夏の破片ばかり追いかける。

それでもいつしか新しい季節への、なんの根拠もない期待と高揚感が追いかけてきて、ようやく私は夏を諦める。

私の天敵、いや私を天敵とみなすリカコは相変わらずブー・フー・ウーとつるんでいた。

そして登校日に幸ちゃんに突かれ、血相を変えて否定した彼女のぽっちゃり度はさらに増していた。

本当にアイスクリームを食べ過ぎたのかもしれない。

いつもなら私の様子をチェックしながら攻撃するタイミングを狙っているはずが、休みを開けてその勢いは失われている。

大人しい、というか覇気がない。

自分のチャビーな様子をつつかれるのを懸念し、私の背のでかさを茶化すことができないということか。

それでもふと横を向くとやたら視線が合うので観察されてはいるらしい。

でかい女が相当お気に召さないようだ。