兄貴がミカエルになるとき

「三品って言ってたけど」 

「げっ、三品? もしや三品孝?」

幸っちゃんが大きな目をもっと見開いて私を振り向いた。

「そうそう、確かみしなたかしって名乗ってた」

「やばいよ、あいつハリウッドランジェリーの息子だよ」

ハリウッドランジェリーといえば、国産にもかかわらずハリウッドの女優たちが愛用していることで有名なランジェリーブランドだ。

最近ではメンズのランジェリーもバカ当たりして、ムキムキボディのモデルを使ったショーは、下着のショーというよりはいい男のショーとして女性の間で話題になっている。

「私、中学が一緒だったんだよ。実はちょっと好きだったんだけど、あいつとどういう関係?」

人差し指で私の横腹をつついて幸ちゃんが口をとがらせる。

「知らないよ。待ち伏せされて、無視して通り過ぎたら、君、モデルだよねっていきなり言われてパニクっているところにトオ兄から電話があって、ごきげんようしてきたわけよ」

「ごきげんよう?」

言葉が支離滅裂でよくわからないと、幸っちゃんが首を傾げる。

「怖いんだよ、私の体のサイズを言い当てるの。で、シャライと一緒だね、って。まさか私がシャイラだってバレてる?」

「いや、そんなことはないはずだ。ただ、疑っているみたいだな」

ミラー越しにトオ兄がこちらに視線を投げてきた。