兄貴がミカエルになるとき

言ってる意味がよくわからないけど、トオ兄はひどくあきれた顔で、後部シートから体を前に前に乗り出している幸ちゃんを睨んでいる。

私はさっき会った三品君という男子の顔を思い浮かべて見たが、ニューヨークのショーで会った記憶はない。

「ねえ、本当にさっきの男子ショーを見ていた? 入場者は限られていたはずだし、トオ兄の見間違いじゃない?」

「いや、日本人はほとんどいなかったから覚えている。それに……」

「それに?」

幸ちゃんとハモって聞き返す。

「それに、目立っていたから覚えているんだ。ああした場所にいるには若すぎなのに、すんなり馴染んでいるのが不思議な感じだったんだ。それと……」

「それと?」

またハモってしまった。けど今度は、「いや別に」と、トオ兄は言葉を濁し、代わりに名前はなんだと聞いてきた。