「倒れるな」

「へっ?」

「倒れたり気を失ったりするな」

「するなっていってもわざとじゃないし」

「お前のせいで寿命が10年は縮んだ。もしまたお前が倒れたりしたら、また俺の寿命が短くなって、さらに何度もお前が倒れたら俺の寿命はなくなる。そしたら俺は約束を守れない」

私が何度か失神を重ねるとトオ兄の寿命が尽きるという極端な論理を説くトオ兄の顔は怖いほどに真剣だ。

だけど私ってトオ兄とそんなに真剣な約束をしたっけ? 

そんなに大事な約束を忘れた? やはり熱のせいでとんまになったのか。

私はブランケットを目の下まで引き上げて、恐る恐る聞いてみた。

「約束って?」

「もう忘れたか」

真顔で尋ねられ、忘れたとは即答しにくい。

けれど正直思い出せない。