由美子さんのお店に再び戻ると、ママと由美子さんが怖い顔をして何やら考え込んでいた。

「あんたたちが真実の話をしているって言ったら、大丈夫だろうか」ってずっとあんなでさあ。早く呪縛から…いや、不安から開放してあげてよ。辛気臭いったらありゃしない」

明美さんが顔をしかめて私たちの背中をそっと押す。

トオ兄と私は顔を見合わせて、ママにそっと近づく。

店内を大回りしてママたちのテーブルに近づき、トオ兄は由美子さんの耳元で、私はママの耳元で「ただいま」と囁きかけた。

まったくの不意を撃たれてママは「ひっ」と息を飲んでまるでお化けに出会ったかのような恐怖に歪んだ顔で私を振り返り、由美子さんは「ぎゃーーーーー」っとゴジラが火を噴くように大きな叫び声を上げて椅子から飛び退いた。

何もそんなに驚かなくても。

トオ兄は由美子さんを抱き起こし、ママに手を差し出した。

「そろそろ帰ろう」

ママは素直にこくりと頷いて、トオ兄の手をとった。

「由美子ちゃん、帰るね。チェックして」

「いいわよ、リチャードにつけておくから」

由美子さんがリチャードに負けない在米20年仕込みのウィンクを投げてよこした。