「さて、そろそろママを迎えにいくか」

トオ兄の少し物憂げな視線が私のところに戻ってきた。

「大丈夫だよ。ママなら一人で帰れるよ。ニューヨークは私の庭よ、って自慢してたし」

「そうだな。でも、ママは自分の庭でもときどき迷子になる人なんだ。そして途方にくれるんだ」

意味がわからなかったけど、広い広いお庭で立ち尽くしているママの姿が頭に浮かんだ。

ママの泣き顔なんて見たことないけど、今にも泣き出しそうな顔をして、立ち尽くしているママがいる。

「私はどこにいるの?」と、問いかけながら。

「行こう」と、トオ兄が席を立った。

「大人だけど、ときどき迷子のママを迎えに」