トオ兄のシャーベットはあっという間に溶けて崩れていった。
ガラスの器の中で赤紫色に輝いていたきれいな塊は、どろりとグロテスクな液状に化していた。
それで、と、トオ兄が続けた。
「母さんも父さんも俺が5つの時に死んで、それから俺はママの子供になったんだ」
「もう、いないんだ」
「そう、2人とも死んだ」
それからトオ兄は、多分一番思い出したくない出来事を、なんの感情も交えていないかのように、ただの過去のできごととして、たんたんと話し続けた。
「母さんと父さんは、最初はとても仲が良かったんだ。家族3人、週末になるといろんなところに行った。近くの公園や動物園、遊園地や植物園、夏はビーチ。俺がせがむと父さんはすぐに肩車をしてくれた。自分の背丈よりもずっと高い場所から見える風景は広々していて大好きだった。泳ぎもスケートも星の名前も、父さんは何でも教えてくれた。俺はその頃大きくて優しい父さんが大好きだったよ。昔は母さんも父さんも俺も、いつも笑っていたんだ。
ママはしょっちゅう家に遊びに来ていて、よく一緒に食事をしたりドライブに出かけたりした。まるで母さんと姉妹みたいだった。今思えば、本当に典型的な幸せいっぱいのファミリーってやつだな。それが俺が五歳になった頃には、父さんは会社の同僚と始めた事業に失敗して仕事を失い、大して飲めない酒を飲み続けた挙句にアル中になり、薬にまで手を出して、もう歯止めがきかない状態に陥っていた。
酒を飲むと母さんを殴るようになり、俺が止めると俺も殴られた。毎日毎日、わけわかんないことで怒鳴られて、俺たちは殴られ続けた。
ママはそんな様子を見て母さんが俺を連れて家を出られるよう、周囲の人と準備を進めていたらしい。そのうちの一人がリチャードだよ。そしていよいよ部屋を出るというその日に事件が起こった。その日、朝から酔っていた父さんが母さんの様子に気づいて暴力を振るい、ついにはエスカレートしてキッチンにあったナイフを振り回したんだ。
ガラスの器の中で赤紫色に輝いていたきれいな塊は、どろりとグロテスクな液状に化していた。
それで、と、トオ兄が続けた。
「母さんも父さんも俺が5つの時に死んで、それから俺はママの子供になったんだ」
「もう、いないんだ」
「そう、2人とも死んだ」
それからトオ兄は、多分一番思い出したくない出来事を、なんの感情も交えていないかのように、ただの過去のできごととして、たんたんと話し続けた。
「母さんと父さんは、最初はとても仲が良かったんだ。家族3人、週末になるといろんなところに行った。近くの公園や動物園、遊園地や植物園、夏はビーチ。俺がせがむと父さんはすぐに肩車をしてくれた。自分の背丈よりもずっと高い場所から見える風景は広々していて大好きだった。泳ぎもスケートも星の名前も、父さんは何でも教えてくれた。俺はその頃大きくて優しい父さんが大好きだったよ。昔は母さんも父さんも俺も、いつも笑っていたんだ。
ママはしょっちゅう家に遊びに来ていて、よく一緒に食事をしたりドライブに出かけたりした。まるで母さんと姉妹みたいだった。今思えば、本当に典型的な幸せいっぱいのファミリーってやつだな。それが俺が五歳になった頃には、父さんは会社の同僚と始めた事業に失敗して仕事を失い、大して飲めない酒を飲み続けた挙句にアル中になり、薬にまで手を出して、もう歯止めがきかない状態に陥っていた。
酒を飲むと母さんを殴るようになり、俺が止めると俺も殴られた。毎日毎日、わけわかんないことで怒鳴られて、俺たちは殴られ続けた。
ママはそんな様子を見て母さんが俺を連れて家を出られるよう、周囲の人と準備を進めていたらしい。そのうちの一人がリチャードだよ。そしていよいよ部屋を出るというその日に事件が起こった。その日、朝から酔っていた父さんが母さんの様子に気づいて暴力を振るい、ついにはエスカレートしてキッチンにあったナイフを振り回したんだ。


