兄貴がミカエルになるとき

時間が早いせいか、店内にはまだ誰もお客さんがいなかった。

ママと由美子さんが来るまでの間、私はモデルウォークを余興でやらされ、
「すごいわあ、紗季ちゃんたらモデルに見えるわよぉ」と喝采を浴びた。

見えるではなく駆け出しですけど一応モデルです、という反論はぐっと胸に押し込んだ。

約四十分後にママと由美子さんが到着した。

その頃には馴染みらしきお客さんが数組入り、店内は徐々に盛り上がっていた。

みんなが3杯目のお酒を飲んで陽気になってきたのを見計らい、私は今度こそホテルに戻ることにした。

「送るよ」と、トオ兄がソファから立ち上がったが、私はあえて明美さんに送ってもらうことにした。

「トオ兄は由美子さんのお店に来るのを楽しみにしてたんだから、そのまま飲んでてよ。明美さん、悪いけど送ってもらってもいいかな」

ホテルは歩いても20分ほどで行ける距離にある。そんなに時間はかからない。

突然声がかかった明美さんは訝るような顔を見せたが、
「あら、明美ちゃんを名指しなんて珍しいわね。いいわよ、送ってあげなさいよ」と由美子さんに促され、
「オッケー」と、席を立った。