兄貴がミカエルになるとき

1.0の視力を目一杯使ってとお兄の視線の先の人物をよおく見てみると、知っているおじさんが手を振っていた。

リチャードだ。

普通なら偶然居合わせたと思うところだが、リチャードに限っては95%偶然ではないはずだ。

「遅かったじゃないか」

リチャードが水滴のついたビールのグラスを持ち上げる。

ほらね、やっぱり偶然じゃない。

「遅かったって、なんでここに来るってわかったの?」

リチャードに近づきながらトオ兄が尋ねる

「アキに連絡したら君たちはセントラルパークに行ったって言うからさ。だったら必ずここに来ると思ったわけ。トオルの好きな場所だから、こんなビューティフルデーに立ち寄らないわけがないと思ってね」

でも、ちょっと遅いから心配しちゃったよ、とリチャードがいかにもアメリカンぽく片目をつぶった。

トオ兄に向かって「こなきゃよかったね」と言うと、リチャードはアハハと首をそらして楽しそうに笑う。