トオ兄を抱いている男性は日本人ではなく、明らかに欧米系の外国人だった。

「トオ兄ってハーフみたいな顔だね」と、なにげにいつも言っていたけど、この男性がトオ兄の実のお父さんで、まさか本当にハーフなら、納得だ。

「これはまずい」

偶然とは言え、みんなが大事にしまっていた秘密の小箱のふたを、私はいとも簡単に開けてしまったのかもしれない。

心臓の音を頭の中で騒がせながら、写真を見つめて考える。

真実を知りたい。

けれど家族が内緒にしてきた事実を問いただしていいものか―――。


ママとトオ兄の肩の傷。そしてトオ兄の過去。

私が生まれる前の、私だけが知らない秘密。

私が知ったら誰かが傷つく? 家族の何かが壊れる? 

自分が生まれる前のことをほじくり返す意味がある?

「うーん」

散らばったアルバムを前にあぐらをかいて考えた。

そのとき、ドアの向こうでカサリと音がして、何かが動いた気配があった。

けれど気にも留めずに私は床に座って考え続けた。