家に入ると、母さんは台所で買ってきたネギやらじゃがいもやらを冷蔵庫に入れていた。




「母さん、風呂は?」




母さんは黙って作業を続け、最後に牛乳を入れ終え、冷蔵庫をバタンっ!と力強くしめた。




「いい加減にしなさいね、あんた!」




「え?」




「何時やと思っとん?買い物から帰ってもおらんし。母さん、神社の方とかずっと探しとったんやけんね!」




学校が終わるのは大体15:30。そして、家では門限が17:00と決まっていた。
そういえば、母さんが入ってくるとき、買い物袋を持っていなかった。




「それに西田さんのお母さんにまで迷惑かけて何様のつもりなん!?」




母さんは、俺の両肩を掴んだ。




「いい?母さんはねえ、人に迷惑かけることがいっちばん嫌いなんよ。頼むけん、迷惑かけるようなことはせんといて!いい?」




そう言って母さんは風呂場に向かった。




俺は自分がしたことでたくさんの人に迷惑をかけていた。
同じ班の大島達に、雪石先生に、病気の琴吹に、西田に、西田のお母さんや郁美さんに、そして、心配して探してくれた母さんに、眠い中、二回も外に出ることになった浩太に・・・



琴吹に謝るのだって明日でもよかった。
学校に来なかったら土日でもよかった。
そもそも、母さんに電話をすればよかった。




俺一人のわがままで、いろんな人を巻き込んでしまった。




それから俺は、沸いた風呂の中で
静かに泣いた。