「で、すごい仕事ヤル気になってた矢先に、残念なお知らせもらっちゃったから、ちょっと落ち込んでた」

「残念なお知らせ?」

「うん。さっき仕事関係の人が来ててさ、聞いた」

 あ、岩崎悠大のことか。

「俺に内定してた仕事、他の人間に流れたって。まあしょうがないよねー。縁がなかったってことだよなあ。未練がましいの、かっこ悪いね」

「それって、どんな仕事?」

 潔い透琉くんが、未練を口にするのは珍しい。
 よほど大きな仕事だったんだろうか。

「秋の連ドラの、高校生役。前に、菜々ちゃん言ってたでしょ。シクハイの幸也さんみたいに、役者もこなす芸人に憧れるって。それと、俺の制服姿見てみたいって」

 あ、例の……
 ぐんちゃんと永原さんに頼まれて、透琉くんにゴリ推ししてた仕事。


“仕事の幅を広げることは、透琉にとって、とーぐんにとって、大事なことなんです”

 永原さんもあんなに必死だった。

 あれからどうなったかは聞いていなかったけれど、順調に話は進んでいたんだな。
 それがポキリと折れてしまったのは、やっぱり今回の透琉くんの骨折が原因なんだろう。
 
 ギプスが取れるのが撮影に間に合わないのかもしれないし、ゴシップが原因でタレントイメージが悪くなってしまったからかもしれない。

 どちらにしろ、責任を感じる。

“勿論わざとやったわけじゃないけど、責任感じてるよ。だから、せめてもの罪滅ぼし”

 岩崎悠大の言葉を思い出す。

“とーるのために一肌脱げる?”