「今日退院した子、おめでとうって見送ったんだけど。治って出てったわけじゃなくて、仮退院なんだって。帰ってはまた戻って来てを繰り返してて、もうこっちが家みたいな感じだって、お母さんが言ってた。小さな体で治療頑張ってて、痛いこと辛いことだらけで。余命宣告されてて。だから笑ってる顔見ると、本当に嬉しいんです。ありがとうございますって言われて、なんかさあ……何だろう、俺が泣きそうになってる場合じゃないだろって思ったし」
「……うん」
「もっと頑張りたいなあって思った。医者じゃないから病気を治すことはできないけど、面白いって、そのとき限りでも笑ってもらえるように。それが、俺のできることだから」
静かに穏やかに語る透琉くん。
優しい口調ながら、強い響きがある。
「仕事は選ぶものだって思ってたけど、与えられたものだったって気付かされたし。健康なのが当たり前って勘違いしてんのと同じでさ、オファーがあって当たり前みたいな。売れて、調子に乗ってるって言われてムカついてたけど、実際調子に乗ってたんだよなあ」
「そんなこと……ないよ」
コンパ三昧ふざけんなと思ったことは、もう水に流そう。
ワガママ、生意気と言われることのある透琉くんだけど、謙虚なところもたくさんある。
素人さんに対して偉ぶった態度は取らないし、元々物欲はあまり無いらしく、贅沢はしない。
いまだにずっと同じマンションで、ぐんちゃんと同居していて、さすがにそれはそろそろ越したいと言いながらも、新居を探す暇がなくて、そのまんまだ。
二人でネタ合わせしたり、オンエア観て反省会したりするのには都合がいいから、まあいいかとなっているらしい。
コンビはプライベートで一緒にいすぎると仲が悪くなると聞くけれど、とーぐんの二人は仲がいい。
コンビである前に、幼馴染みだからかもしれない。

