彼はお笑い芸人さん



 あれ、そういえば……だったら、あの展示会で偶然にも出会ったとき、透琉くんは私のことを知ってたってことなのかな?
 それとも後から、あのときのラジオ体操女だと気付いたんだろうか。

 それもぐんちゃんに聞けばよかった。


 コンコンと病室のドアがノックされた。

 誰だろう? 看護師さんかな?

「はい」

 カチャリと開いたドアから顔を覗かせたのは、背のすらっとした男の人だった。
 どっかで見たこと……あるような?

「……あっ」

 思わず小さく叫んでしまった。

「今晩は」

 そう言って病室に入ってきたのは「岩崎悠大」、時の人だ。
 さっきぐんちゃんが持ち帰った週刊誌の記事に、「若手俳優I」として登場している。

 うわわわ、テレビで見たことある! うわあ顔ちっちゃい!
 何故ここに!? って、あっそっか

「透琉くんは、今いません。もーすぐ戻って来るかと……」

「知ってる」

 さすが役者さん。人慣れしているのか、岩崎悠大は物怖じしない態度で言った。

「さっきまで、喫茶ルームで一緒にいたから」

「え? あ……そうなんですか」

 じゃあ何でここに? てか透琉くんは?
 と軽々しく聞けない雰囲気の、俳優オーラを纏っている岩崎悠大が逆に尋ねる。

「君が、とーるの恋人?」