慌てて椅子を立ち、週刊誌を拾い上げたぐんちゃんは、

「透琉、ちょっと散歩してくるって言って出てます。多分、小児科病棟。仲良くなった子が、今日退院って言ってましたから」

 と言って、呆れたように微笑した。

「小児科病棟には月に一度、ピエロが慰問に来るんですよ。子供たちを笑わせに。昨日がその日だったらしいんですけど、ピエロ急に来られなくなったらしくて。それ聞いたアイツが、なら俺らの出番でしょって。急遽、漫才ライブショー。お前が慰問してる場合かって感じなんすけどね……」

 透琉くんらしい。
 しかも昨日の昼間の話だろうに、今初めて聞いた。

「でも……俺らの方が元気もらえました。子供の屈託ない笑顔って、いいもんですね」

 普段子供嫌いを公言してるぐんちゃんの言葉とは思えない。

 心配して見つめると、ぐんちゃんは複雑そうな顔をして、ベッドに視線を落とした。

 そこには、放り置かれたゴシップ週刊誌。
 何か言いたそうなぐんちゃんに、私も言いたいことがある。

「あの、その……色々と」

 ぐんちゃんが怪訝そうな視線をよこした。

「ごめんなさい。そもそもの発端は、私の誕生日だよね。透琉くんが無理して会いに来てくれたから。ごめんなさい。私がもっと透琉くんのことを信頼してたら、大丈夫だって思えてたら、こんなことには……」

 ぐんちゃんはじっと私を見つめ、それからふっと息を吐いた。

「菜々香さんのせいじゃないですよ。俺のせいです」

「え?」

「ここに書いてある記事……事故のとき、転落直前に俺が掴んだのに、透琉がそれを拒絶して落ちたっての、本当です」