彼はお笑い芸人さん


「だっ、駄目だよ、透琉くん」

「何で駄目ぇ?」

 言ってるそばから、手はむにむにと。
 パジャマの下はノーブラ。ダイレクトに感触が伝わってくる。

「だ、だって、足折れてるんだよね?」

「んー、でもここは超元気。元気すぎて痛い。これは菜々ちゃんにしか治せないと思うんだよねー」

 そう言って透琉くんはいやらしく笑い、密着している体をさらに押し付けてきた。
 自己申告のあった箇所が、確かに超自己主張してる。

 それがグリグリと当たるのは、私の敏感な場所。

「やっ…んっ」


 ドンドンっと寝室のドアが叩かれる音がした。
 びっくりして、飛び上がりそうになった。

 だっ、誰!?
 遠藤君、帰ったって言ってたよね?

 透琉くんを見ると、はあと溜息をついて

「はーい、何でしょうかあ?」

 とドアに向かって返事をした。

 どうしてそんなに驚きもせず、普通なのか。
 その謎は次の瞬間に解けた。

 ドアを開けて入ってきたのは、ぐんちゃんだった。

 びっくりして声も出ない私に軽く会釈したあと、ぐんちゃんはつかつかと歩いてきて、手に持っている丸めた新聞を振りかざした。

 スパーンといい音が響く。

「ってええええ! 何すんだよっ、怪我人にっ!」