彼はお笑い芸人さん



 うおー、反則だあー。
 そんな上目遣いで、切なそうな表情で。愛する人に求められて、駄目だなんて言えない。

 私だって、透琉くんとくっつきたいし、触れ合いたいし、じゃれあいたいんだもん。
 そのために生きているんだとさえ、たまに思える。

 完全に透琉くん中毒。

「では、失礼します」

 慎重に透琉くんを跨いで、そうっとお尻を下ろした。

 透琉くんの体の上に乗り、向かい合って座るというこの体勢。
 予想を上回る恥ずかしさに、目が泳いでしまう。

 そんな私を至近距離から見つめる透琉くんは、私の肩を抱き寄せた。

 普段、立って向かい合ってこうすると、透琉くんの肩口に顔を埋める形になるのだけど。
 この体勢だと、私の方が高い位置にいるために、まるで私から襲ってるみたいだ。

 まあ、それもいいかな。新鮮で。

 首を屈め、透琉くんにキスをした。
 ばさりと顔にかかる長い髪の毛に、透琉くんが指先を絡める。

 頭を固定するようにして、添えられる両手。
 押し当てているだけの唇に、するりと舌が侵入してくる。

 なされるままに受け入れる。
 生き物みたいに艶かしく動く舌も、徐々に乱れてくる息遣いも。
 この温もりも、せっかちさも、透琉くんだから、好きだ。

 唇を離し、見つめ合う。
 情欲に濡れた瞳はひどく野生的で、ドキリとする。

 ほわんとして緩そうなルックスとの、このギャップにいつも参ってしまう。

「……っん、なっ!?」

 すっと下りてきた手が、すすっと脇から入ってきたかと思うと、むにっと胸を揉み上げた。

 思わず変な叫び声を上げてしまった。