「それにしても早かったですよね。飛んで来いって言ってから、五分もかからなかったじゃないですか。芸人さんって飛べるんですね」
遠藤君が真面目くさった顔で言うと、透琉くんも神妙な顔で言った。
「ここだけの話ね。他のヤツらは飛べないけど、俺だけ飛べる。ぶっちゃけ五十分はかかったけど。来いって言われてから飛んだんじゃ、間に合わないんだよねー」
そう言って、透琉くんはふわりと微笑した。
「遠藤君に呼ばれたから、来たわけじゃないよ。菜々ちゃんと約束してたから。今日は何があっても、絶対に会うって」
はあーと遠藤君が溜め息を吐く。
「あのー、目の前でいちゃこらしないでくれます?」
「え、どこが? まだ何もしてないじゃん」
「今、軽く殺意湧いたんですけど」
「遠藤くん、いいねえ。群司っぽい」
「どこがですか。あんな綺麗な顔してないですよ」
「ん~、雰囲気?」
確かに遠藤君と透琉くんのやり取りは、初対面とは思えないほど馴染んでいる。
仲良く話しながら去っていく声に、安堵した。
ああ、もう何が何だか。
たくさん気になることはあるものの、体調不良にて離脱。
遠藤君が運んできてくれたレトルトのお粥を二口食べ、風邪薬を飲んで、目を瞑った。

