結局、遠藤君のお世話になりっぱなしだ。
寝室に運ばれ、パジャマに着替えた。
「とりあえず小西さんは、寝ててください。何か胃に入るものと薬持ってきますね」
冷静にそう告げる遠藤君の隣で、透琉くんが笑みを見せる。
「俺と遠藤君がついてるから、心配ないからね。菜々ちゃんはゆっくり寝てて。男同士の話は、こっちで話すから」
男同士の話って……どんな話?
“俺、正直、小西さんの彼にいい印象持たなかったです”
遠藤くんの忌まわしげな口調を彷彿とする。
修羅場が勃発したらどうしよう、と不安に思う私の気持ちを察したらしく、透琉くんがにこりと笑った。
「だーいじょうぶ。俺ら、良識ある大人だから。さすがにこの状況でボコリ合いとかしないし。ちゃんと仲良く話し合えるよ。ね?」
同意を求められた遠藤君は、不満そうな顔をした。
「仲良くかどうかはアレですけど、冷静には話せますよ。さすがにこんな大怪我されてたら、戦意喪失しますよ。ていうか、相手が芸能人って時点でアレですよね」
どれ?
そうだ、ぼうっとしすぎて頭が回らなかったけど。
透琉くんは有名人だ。私との交際が明るみになったら……まずいよね?
「うそっ、もう白旗揚げちゃうの? やたー、不戦勝」
透琉くんがほっと息を吐く。
「良かったあ、間に合って。菜々ちゃんのこと奪うとか言うからさあ、超ダッシュしたし。いや、ウソ。足折れてて無理だったし。超焦ったああ」