意味が分からずポカンとすると、遠藤君が横から口を挟んだ。

「何すっとぼけてんですか。小西さんとの約束、何時だったと思ってんですか。ぜんっぜん、間に合ってないっすからね。遅刻もいいとこじゃないですか!」

 さすが遠藤君、ナイスツッコミ。

「うん、それはホントごめん。菜々ちゃんに直接謝りたいから、とりま中入れて? 外でぎゃあぎゃあ言い合うのやだし」

 ああ、これぞ透琉くん。
 悪びれず、率直に自分の要求を述べる。

 渋い顔をして遠藤君が玄関を開けると、透琉くんが立っていた。
 その姿に、遠藤君も私も目をみはった。

 右足には白いギプス、左手には松葉杖。

「どっ、どうしたのその怪我っ」

「んー、ちょっとリハ中の事故で……ノー残業デーの予定だったのになあ。遅くなって、ホントごめんね。お誕生日おめでとう、菜々ちゃん」

 優しげな眉をハの字に下げる透琉くん。
 込み上げてくる感情が言葉にならない。

 愛しい人の痛々しい姿に、胸が締め付けられるように痛くなる。

「……良かった。生きてて……くれて」

 ありがとうと言おうとして、気分が悪くなってうずくまる。

「菜々ちゃんっ!?」

 透琉くんが驚きの声を上げる。
 さっと助け起こしてくれたのは遠藤君だ。

「小西さん、熱があるんです。掴まってください、とりあえず中に……辻さんも」