「彼の第一声、何だったと思います?」
何だろう……てか、遠藤君が怒ってる風なのが気になる。何で?
「『菜々ちゃん、お誕生日おめでとー』って。小西さん、今日誕生日なんですか?」
「……そう……だけど」
それが?
遠藤君は眉間にしわを寄せた。
「だから、ずっと待ってたんですね。体調悪いのに。大切な日だから。それなのに、三時間も過ぎて電話して来て、おめでとーって随分能天気ですよね。正直、俺、小西さんの彼にいい印象受けなかったです。腹が立って、つい言っちゃいました」
「……何て?」
「今すぐ飛んで来いよ。じゃなきゃ、俺が彼女を貰う」
じぇじぇじぇ。え、遠藤君!?
一人称「僕」から「俺」に変わった遠藤君は、「後輩」から「オトコ」の顔になっている。
起き上がろうとした私の両肩を、ぐいと押し戻した。
「寝ててください」
険しい顔つきで遠藤君がそう言ったとき、家のチャイムが鳴った。
ピンポーン、ピンポン、ピンポン、ピンポン、ピンポン――
れ、連打!?
遠藤君と顔を見合せる。
「……彼? にしては早いよなあ」
訝りながら、遠藤君がインターフォンのモニター画面を確認した。
そして、えっと言って固まってしまった。
まさか、やっぱり……
ソファーから下りて、ふらふらと歩いた。
遠藤君の隣から、四角い液晶モニターを覗く。
映っていたのは、紛れもなく透琉くんだった。
「透琉くん、待ってね。すぐ開ける」
「ありがと……菜々ちゃん。俺、間に合った?」
「え?」