家に帰るには、JRから都営線に乗り換えて、降車駅から徒歩八分。

「え、遠藤くんってご近所さん?」

 最終的に降りる駅が同じと聞いて、目をみはった。そんな偶然ってあるんだ。

「そうでもないですけど」

 曖昧な受け答えをする遠藤君は、さっきから急に口数が減った。

 そういえば、お腹減ったって言ってたもんな。
 時間潰しに付き合わせた結果、こんな時間まで食事抜きになってしまって、悪いことしたなあ。


「それより、小西さん具合悪くないです? さっきからしんどそうに見えるんですけど。しんどかったら、無理して喋んないでくださいね」

 真顔で言われ、ドキッとした。
 ちょっと疲れたなあとは思っていたけど、顔に出てたんだろうか。

「大丈夫、全然。遠藤君こそ、疲れてるしお腹減ってるよね。ごめんね」

「僕のことはどうでもいいんですけど」

 本当にどうでも良さげに言いながら、遠藤君はすっと手を伸ばしてきた。
 びっくりして咄嗟につぶった瞳の上に、手のひらが触れた。

「……熱、ありそうですね。ぼうっとした感じだし、手を掴んだときも熱かったから。もしかして、と思ったんですけど。もしかして、脈アリなのかなって。んなわけないですよね、熱のせいですね」

 え……熱?

 ぼうっとしてる自覚はあったけれど、熱があるとは思いもしなかった。
 手足がだるく感じるのも、疲れから来たものだと思っていたけど。

 遠藤君が手を引っ込めたあと、自分でも額に手を当ててみる。
 う~ん、熱いような熱くないような……。

「熱い手で計れます?」

 冷静に突っこまれて、恥ずかしさで熱くなる。
 天然丸出しなのは、熱のせいにしておこう。

「そういうときは、比較対象がいりますよね」

 遠藤君は私のもう片方の手を取ると、それを自分の額に当てさせた。