彼はお笑い芸人さん


 まさかそこまで付き合わせて、そんな仕打ちはできない。

「あ、大丈夫。……もう、家に帰って待とうかな。キャンドルアート展、すごく良かった。ありがとう」

 できれば透琉くんのプランどおり、この付近で落ち合いたかったけれど。
 ここまで待っても連絡がないということは、家で待っていたほうがいいような気もしてきた。

 出先で不安に思いながら待ち続けるのは、やっぱり疲れる。
 ちょっとぐったりしてきた。

「それは良かったです。じゃあ送りますね」

「え? 大丈夫、一人で……」

「僕もJRですから。一緒ですね」

 あ、そっか。そうだよね。
 わざわざ送ってくれるのかと勘違いした。自意識過剰で恥ずかしい。

 家で待つことにしたよと透琉くんにメールを打ち、駅に向かって遠藤君と歩き出す。

 話題は自然と、キャンドルアートのことになった。
 天の川を構成していた無数のキャンドルの内、十分の一程度は遠藤君が作ったらしい。
 会社が終わってからや、休日に。

「へえー、凄いねえ」

 ほんと多趣味というか、友達想いというか。

「意外と簡単ですよ。数こなすとコツが掴めてくるし」

「そっかあ、さすが遠藤君」

 私なら、いくら数をこなしたところで、簡単とは言えない気がする。