彼はお笑い芸人さん



「あっ、小西さんのキャンドル。シークレットメッセージ、見てないですね」

「あっホントだ」

 遠藤君に指摘されて気付く。
 それを楽しみにして、シークレットタイプを選んだのに。溶け出す前に少し離れたところに置いてしまった。

 キャンドルを取ろうと伸ばした手を、ぱっと遠藤君に掴まれた。
 びっくりした。

「火傷するといけないから、僕が取ります」

 有無を言わさない口調で言って、遠藤君は私の手を離すと自分が代わりにキャンドルを取り、それを私に差し出した。

「ありがとう」

 覗き込んだキャンドルの表面は溶けて、新たな層が出現していた。
 そこに描かれたメッセージは「you are so sweet」――君はすごく優しい、だった。

 プリンデザインのキャンドルだから、「スイート」の意味にかかっている。
 奇をてらわず、意外に無難。
 可愛らしいメッセージに、ほっこり癒される。私が優しいかどうかは置いといて。

 優しいのは遠藤君だ。

 ゆっくり会場を一巡し終わっても、透琉くんから連絡はなかった。

「どうします? 近くで、軽く飯でも食いに行きます? 腹減ってません? 彼から連絡があった時点で、置いて行ってくれていいんで」