彼はお笑い芸人さん



「じゃあ面白そうだから、シークレットタイプで。これにしようかな」

 迷うほどある種類の中から、小さなプリン型のキャンドルを選ぶ。
 色もクリームイエローでプリンっぽい。表面には丸っこいピンクのハートが二つ。

「いいですね、それ。可愛くて、小西さんっぽい。俺はじゃあ、これ」

 遠藤君が選んだのは、円柱型のモノクロのキャンドル。
 側面に「燃え尽きるまで君のもの」という意味の英文字が、新聞風に転写されている。スタイリッシュだ。

 正直、キャンドルアートというものをよく知らなくて来たけれど、来て良かったなあと思う。

 こんなに色々な種類の、デザインの凝ったキャンドルを見れて、楽しいし目の肥やしになる。
 キャンドル自体もそうだし、その一つ一つが集合して、大きな作品が出来上がっているのも凄い。

 自宅用にもいくつか買って帰りたいなあ。
 そう思って、思い浮かぶのはやっぱり透琉くんの顔。

 連絡はまだない。

 もうここに来て三十分は経つから、約束の時間から二時間は過ぎている。
 本当にどうしたんだろう。

 連絡の一つくらいあってもいいのに。
 まさか合コンじゃないよね? 


「置きに行きましょうか」

 ぼさっとしていたら、さっさとお会計を済ませてくれたらしい遠藤君に声をかけられた。

「あ、お金払うよ」

「このくらい奢らせてください。てか寄付ですから」

 スマートにそう言って、遠藤君は涼やかに笑った。
 サラリーマンらしく短めの黒髪に、しゅっとした顔立ち。

 天の川の真ん中に戻って、空いたスペースに寄付のキャンドルを二人で灯した。
 近くのキャンドルから貰い火をして、その火がまた新たな火を灯す。

 人々の善意が、こうやって世界中に広がっていったらいいな。
 揺らめく炎を眺めながら、感傷的に思った。