「小西さん」
遠藤君に呼びかけられてはっとする。
もう列の一番前だ。キャンドル売りのお兄さんとご対面。
「ようこそいらっしゃいました」
「おめでとう、大盛況じゃん。間宮先生」
あっ、この人が間宮カズキさんか。
遠藤君のお友達のキャンドルアーティスト。
明るい髪色で、外国人風のパーマ。
それを上のほうだけ無造作に結ってあり、覗く耳たぶには数個のピアス。
いかにもアーティスト風情だ。
「ありがと。まあ、七夕の力もあるよね。それと誰かさんのお陰」
偉ぶることもなく間宮先生は控えめに笑って、私のほうを見た。
「来てくれてありがとうございます。ごめんね、連日優太借りちゃって。デートの時間、だいぶ減ったでしょ」
「えっ?」
「あー違う違う、小西さんは会社の先輩。彼女いないっつの。いたら、手伝い来てねーから」
「へえ~、そう。やらしいなあ」
「何がだよ。お前、後で覚えてろよ。とりあえず、キャンドル売れ」
仲いいんだなあと思うと同時に、意外に思うのは遠藤君の素の口調。
友達同士ではやっぱ違うんだなあ。
「どれにする?」
私に向けられる笑顔はいつもと同じだけど、口調は自然と砕けている。
「ひとえにメッセージキャンドルっていっても色々あってね、これは側面に直接文字を転写してるタイプ。こっちは、真上から見ると蝋で書いてあるタイプ。で、これはそのシークレット版。火を点けて、少し経ってキャンドルが溶けると、文字が出てくるっていうヤツ」
やっぱりスタッフ並みに詳しい。
さすが、連日手伝いに来ていたというだけある。

