遠藤君の表情が一瞬曇った。
「多分って。連絡もないんですか?」
「うん……仕事中だからかな。もうすぐ来ると思うから。大丈夫だよ、ありがとう」
自分に言い聞かせるように言うと、遠藤くんは何か言いたそうだったけど、ぱっと表情を変えて笑った。
「じゃあ、まだ待ちますよね。ここを出て、近くで?」
「え? うん」
「じゃあ、一緒に行きませんか。キャンドルアート展。時間潰しになるし。ここから近いから、彼氏から連絡入ったらすぐ落ち合えますよ」
遠藤君の提案に迷う。
確かに距離も近いし、見に行きたい気持ちもある。でもなあ。
「ね、そうしましょうよ。場所変えて待つにしても、遅くに女性一人でってのは心配だし。彼が来るまでの時間潰しでいいですから、付き合ってもらえませんか。職場の先輩として」
そうだ、遠藤君とは職場の先輩後輩だ。
そんな露骨に警戒するのは失礼だし、自意識過剰っぽいかも。
別に、食事や映画に誘われているわけじゃない。
友達の個展を会社帰りに見に行くくらいは、職場の付き合いとして自然な範疇だよね?
「……じゃあ、お言葉に甘えて。あ、ちょっと待ってね。彼にそうメールしとく」
やましいことじゃないという証拠に、透琉くんに報告を入れる。
“これからはちゃんとマメに連絡入れるし、不安にさせるようなことはしないから。今度何かあったら、キャベツ、玉のままでぶつけてもいいから”
透琉くんにばかり、約束を押し付けてはいけないと思うから。

