あの焼肉会での夜以来、透琉くんはこまめに連絡をくれるようになった。
今どこそこで何の仕事してる。何時に終わりそう。やっぱり延びそう。
家帰ったよ、オヤスミ。
そんな内容のメールを毎日送ってくれる。
文章は短くてまるで業務連絡のようだけれど、それさえも今まではなかったから、すごい変化だ。
「これからはマメに連絡する、不安にはさせない」と言ったことを、有言実行してくれているのだ。
正直一ヶ月も続くとは思っていなかった。
透琉くんは元々ルーズで自由な性格で、決めごとに縛られるのが嫌いだ。
そう知っているから、無理しなくていいよと言ったけれど、無理はしていないよと笑う。
今日も無理しなくていいよと言ったけれど、今日は無理してでも絶対に会うと言ってくれた。
「だって菜々ちゃんの誕生日じゃん。一年に一日の特別な日でしょ。それだけは譲れないって、群司にも永原にも言ってあるから。七月七日は早上がりにしてくれって。夕方五時以降は、絶対に、何があっても仕事しねーぞって。彦星は、仕事サボリすぎて織姫と別れさせられちゃったけど、俺はめっちゃ仕事頑張ってるから、織姫に会わせてもらっても良くない?って、陳情したんだよね」
その結果、今日の仕事は五時上がりが確定されたらしい。
私も定時で仕事を終えて、待ち合わせ。
透琉くんが用意してくれている「ハッピーバースデイプラン」を効率よく遂行するためには、都心で落ち合ったほうがいいらしく、家には帰らずここで待っている。
もうすぐ約束の時間だ。
会社帰りに落ち合うなんて初めてで、ちょっとドキドキする。
デート服寄りの通勤服に、先週買ったばかりのリボンパンプス。
去年の誕生日に透琉くんから貰った、リボンモチーフのネックレスと揃えてみた。