二十二歳にして人生悟りきったような瞳をしている遠藤君は、そう言って穏やかに微笑んだ。
 何てイマドキな。「育メン」志望とは。

 将来の奥さんにしてみたら、そりゃあ助かるだろう。
 適度に収入はあって、仕事人間ではなくて家庭を重視してくれて、子煩悩か。

 数年後の遠藤君ファミリーがぼわんと頭に浮かぶ。

 ハイビスカスの髪飾りとハワイレイを着けたちっちゃな女の子が、遠藤パパにじゃれついている。
 その様子を微笑ましく眺める、波打ち際の奥さん。いいなあ、幸せそう。

「旅行といえばハワイ」ってのは、私の発想が貧困だからだけども。


「遠藤君、旅行好きなんだね」

「好きですね。まず飛行機がめっちゃ好きなんですよ。それと外国。全然違う土地で、見るもの、触れるもの、全部ワクワクします」

 急にイキイキとした瞳で、遠藤君が語り始めた。

 大学時代、夏休みにオーストラリアを横断旅行したことや、タイでは体験僧侶をしたこと。
 いつかエジプトのピラミッドを月夜に見上げるのが夢だけれど、治安情勢が安定しない限り、夢に終わりそうだと苦笑した。

「夢と言えば、ホントにちっちゃなガキの頃は、パイロットになるのが夢でした。飛行機が好きで。けど、そんな簡単になれるもんじゃないし。本当に好きなことは仕事にしない方がいいって、大人になった今は思いますね」