「仕事で、演技だって分かってたら……いいけど。笑イトは『マジガチ』って言ったから」
「うん、ごめんね。あれも仕事だし、演技だから。信じて」
交差点の信号待ちで止まり、こっちを向いた透琉くんは切実な表情で言った。
一瞬迷った。
透琉くんは口が上手くて、ネタ作りも上手だから、果たしてこの話を鵜呑みにしていいのかと不安になる。
「菜々ちゃん?」
「……けどまた先輩に誘われたら、合コンには行くんだよね?」
「……行くね。けど前も言ったけど、それは女の子とどうこうじゃなくって、勉強の場だと思ってる。何事も芸の肥やしっていうか……」
そう言って透琉くんは、真剣な顔を正面に向けた。
信号の色を確認して、ゆっくりとアクセルを踏む。
「じゃあもう一度だけ。俺のこと信用して、チャンスちょうだい。これからはちゃんとマメに連絡入れるし、不安にさせるようなことはしないから。今度何かあったら、キャベツ、玉のままでぶつけてもいいから」
それは痛そうだな。
こうまで言われて、信用できないとは言えない。
どう転んでも、透琉くんのことを好きな気持ちに変わりはないのだ。
「うん、分かった」