きりっと初心に帰ったところで、とーぐんの同期のピン芸人さん、山モンさんが言った。
「あのドッキリってさあ、マジガチ? 実は打ち合わせ有り?」
いきなり核心を突いた質問に、ドキリとする。
代わりに聞いてくれるとは思わなかった。固唾を呑んで、透琉くんの答えを待つ。
ぐんちゃんの表情が変わる。
透琉くんが笑った。
「いやあ、あれはマジでガチ。マジで分かんなかったし。びびるわ~。山モンもいつ仕掛けられるか分かんないよ。皆さん、気を付けましょう」
「お前がな」
「つか菜々香さん、これってどうなんです!? 浮気っすよ、公認っすか? よく許せますね」
安達君がまた喚き立てる。
酔ってるせいか、やけに透琉くんと私に絡んでくる。
「そこはほら、愛の絆……」
茶化そうとした透琉くんの言葉に被せて、言った。
「許してないけど」
自分でも驚くほど低くてドスの利いた声が出た。
全員の身動きがピタリと止まる。
「許してないよ。会うまで怒らないでって言ってたから、もう怒ってもいいよね? 何あれ、何なの。馬鹿じゃないの? ドッキリがヤラセだったら許せるって思ったけど、マジガチ? よくそんな、ネタにして笑えるよね。信じらんない。透琉くんのエロ! エロキチ! 猿!」
堪えていた気持ちを口にしたら、ぐわっと感情が昂ぶって収まりがつかず、咄嗟に目の前にあったキャベツをがっと一掴みした。
それをばっと透琉くんに投げつけて、自分のバッグを手に取り、逃げるように久遠家を飛び出た。

