「あ、雨で思い出しましたけど」
スーツの内ポケットをごそごそして、遠藤君が名刺入れを取り出した。
そこから取り出したチケットのようなものを、私に手渡す。
「配ってくれって、頼まれてて。もしも気が向いたらでいいんで。会社から近いんで、ちょっと寄ってみようかなって思ったら、是非……」
「間宮カズキ、キャンドルアート展」と題されたチケットに目が点になる。
雨からの連想に結びつかなくて。
開催場所の住所は、確かにうちの会社から近い。
開催日は七月七日、月曜日。
「……七夕」
「そうなんです、七夕。和希……あ、その間宮カズキって、大学からの友達なんですけど。初個展は七夕に開くって、心に決めてたらしくて。けど月曜ってのが微妙なんですよね」
「そっか、七夕にキャンドル展……ロマンティックでいいね。ライトダウンキャンペーンの日だし、いいと思うよ」
毎年七夕には、CO2削減のための「七夕ライトダウンキャンペーン」が全国的に実施されている。
照明を消して、キャンドルを灯して過ごそうという提唱も広まっているみたいだし。
「じゃあ是非……彼氏と。他に興味ありそうな人がいたら」
追加で五枚ほど渡されるチケット。
正直捌ける気がしないけれど、遠藤君も捌いてしまいたいみたいだ。
いらなかったらメモ書きにでもしてくださいと言う。
う~ん。私も行きたいけど、日が微妙だなあ。
七月七日は誕生日だから。

