彼はお笑い芸人さん


 じっと合わせた瞳を優しい形に細める、透琉くんにドキっとするけれど。

 ここで怯んではいけない。
 さっとテレビに視線を移した。

「シクハイの幸也さん、すごいよね。芸人さんなのに、こういうドラマにもよく出てて。演技上手くて、存在感あるし」

「へえ……観たことないから、分かんないけど」

 面白くなさそうな声色で透琉くんが言った。

「役者の方が向いてんじゃない?」

 こっ、これはゴリ推しフラグ!?

「透琉くんも……」

「え?」

「透琉くんも、ドラマのお仕事とか向いてそうだよね。役に成りきるの上手だし。高校生役とか似合うと思うなあ。透琉くんの制服姿、見たいなあ」

 う、ゴリ推しが露骨すぎました?

 不自然だったのか、透琉くんは訝しそうな顔をした。
 じっと見つめられて、ドギマギする。

 そこへやって来たのは、中華そばを運んで来た店員さんだ。

「お待たせしましたー」

 ドンっドンっとテーブルに置かれるどんぶり。
 眺めている間に、ひそひそと聞こえてくるのは

「テレビでな。見たことあるわ」

「ああ、歌手か」

「違う違う。え~と、東軍さん」

 斜め向かいの席のおじいちゃん、おばあちゃん。
 透琉くんのことを見て悶々していたらしく、思い出せてスッキリしたようだ。