透琉くんはオンでもオフでも、あまり変わらない。
仕事着も私服も、綺麗めカジュアル。ふわっとした癖毛はセットしてもしなくても、あまり変わり映えしない。
だからプライベートで身バレする確率は高くて、外で一緒にいるときにはちょっと落ち着かない。本人よりも、私が。
こんな堂々とデートしても大丈夫なのかなあと心配に思うけれど、別にアイドルでもない透琉くんの恋愛は禁止されてはいないし、大丈夫らしい。透琉くん曰く。
「一般人女性と真剣交際」というのは別にゴシックネタでもないから、週刊誌にスクープされることもないらしい。
相手が同じ業界人なら取り沙汰されるだろうけど。
「別に、載せてくれても全然オッケー。菜々ちゃんとのらぶらぶツーショット。菜々ちゃんは俺の彼女だから、おまいら手え出すんじゃねーぞって、広く宣言できるってことでしょ。いーよね、それ」
鳳宝軒までの道のりを、手を繋いで歩きながら透琉くんが笑った。
手は繋がないほうがいいんじゃないかなと、パパラッチ対策を推奨した結果、握手繋ぎから恋人繋ぎに変えられた指先で、ぎゅっと握られる。
「よ、良くないよ。そんなことになったら、私、寿命が持たないかも……その前に、とーぐんのファンに殺されないかなあ」
アイドルじゃないけど、アイドル並みにきゃあきゃあ言われてるとーぐんの透琉くんだし。
粘着質なファンもいるらしく、仕事場への行き帰りが容易でなくなったことも、薄々知っている。
永原さんの送迎必須。尾行を巻くのが得意になったみたいだし。
「そんなことないよ。おめでとうって、みんな言ってくれると思うけどなあ。菜々ちゃんだもん、文句の付けようないじゃん。菜々ちゃんあっての俺だし。菜々ちゃんに会えなかったら、今の俺じゃないだろうしなあ」

