彼はお笑い芸人さん


「そんな、天秤にかけるだなんて……。遠藤君の気持ちは、嬉しいけど……受け取れない。ごめんなさい」

 私みたいなちんちくりんじゃなくて、しゅっとした遠藤君には、もっとしゅっとした美人がお似合いだと思う。
 仕事に慣れた頃にはもっと視野も広くなってるだろうし、これからの出会いもたくさんあるだろうし。

 第一、私には透琉くんがいる。

 透琉くん以外の人とどうこうは、想像もできない。

 オロオロする私に、遠藤くんは涼しい顔をして答えた。


「今はそうですよね。だから、“もしも”で。もしも、彼氏と上手く行かないフラグが立ったときのために、頭の片隅にでも覚えといてもらえますか。僕が、小西さんを好きだってこと。天秤にかけるって言い方は、語感が悪いかもしれないけど、人は常に選ぶ権利があって然るべきだと思います。幸福を追求するために。それが民主主義ってもんじゃないですか」

 そうか、それが民主主義ってものなのか。

 掲げられた自由の旗に、翻す反旗はなかった。

 結局遠藤君の主張を了承してしまった形で、十五分のコーヒータイムは終了。
 相談というよりも、すでに心に決めてあったことを発表されただけだったような。

 透琉くんやぐんちゃんが喋りが立つのは職業柄としても、遠藤君も口が上手いよなあ。
 日本男児=口下手っていうイメージは、もう古いのかもなあ。はっ欧米化!?