「ええっ、そんなっ。私にそんな力、ないよ」

「いいえ、ありますあります。透琉への菜々香さんの影響力、パナイですから。菜々香さんと出会って、アイツ変わったし。忙しくてやさぐれてきても、菜々香さんに会って、上手く気持ちの切り替えしてるみたいだし。アイツ、意外と脆いとこあるじゃないですか。菜々香さんっていう支えがいてこその、今のとーぐんの透琉だと思ってます、俺は」

 ぐんちゃんの熱弁に、気圧されてしまった。

 なんせぐんちゃんも喋りが立つ。
 普段クールな雰囲気なだけに、ここぞというときの喋りには気迫さえ感じる。

 それに、ぐんちゃんが、私と透琉くんとの交際をそんな好意的に認めてくれていたなんて、初めて知った。
 思わぬ驚きと嬉しさで、気持ちが纏まらない。

「そんな難しく考えなくていいですから。ドラマに出るなんて素敵ーとか、かっこいーとか言って褒めちぎるか。逆に対抗心を煽るとか。ドラマ出てる、他の芸人褒めて。あ、シクハイの幸也さんとかいいかも」

「透琉が漫才師の仕事にこだわってるのは、僕たちも重々承知してます。でも、好きな仕事だけやりたいっていうのは、それだけで飯食っていける人間だけが許される我がままです。とーぐんは、まだまだ。今の人気も、いつ切れるか分からない、一過性のものかもしれない。仕事の幅を広げることは、透琉にとって、とーぐんにとって、大事なことなんです」