逆にちょっと羨ましく思ったりもする。
 遠藤君が要領よく、頑張らずにスマートにこなしてしまうことを、私は四苦八苦してようやく出来るのだ。

 頑張ったねという評価はもらえるけれど、頑張らないで出来る遠藤君のほうが優秀だ。
 時間を無駄遣いすることなく、オン・オフの切り替えスイッチが見事に作動する遠藤君は凄いと思う。

 と、上司に面と向かって意見することは出来ない、事なかれ主義ですが。
 世代ギャップに溜息を吐く係長には、お疲れ様ですとお茶でも淹れてこよう。

 我が「稔幡工業」は昔ながらの社風で、三時にお茶タイムがあったり、ホワイトボードに花マルが書いてあったり、毎日わざわざ屋上に出て号令と朝礼をしてから、ラジオ体操をしたりする。

 昭和らぶな社長の趣味らしい。

 ラジオ体操、マジか。
 と友達には大抵笑われるけれど、私は好きだ。
 新しい朝が来て、大空を仰ぎ見ると、健やかな気分になる。


 いつだったか透琉くんにそんな話をしたら、

「俺も好き」

 と言って、快晴みたいな笑顔をくれた。

 透琉くんの、あの笑顔が好きだ。

 遠藤君みたいに、仕事はそこそこにと割り切る生き方も悪くないと思うけれど。
 夢を仕事にして、オンもオフもない透琉くんが好きだから、私も頑張ろうと思う。