透琉くんが話し出すと、どんな話も楽しくなる。
テレビで暴露されていた合コンのことも追及してみるも、先輩とのしがらみやアレコレを聞かされている内に笑い話に変わってしまった。
透琉くん曰く、合コンは先輩命令で参加したけれど、神に誓って女の子とどうこうはないそうな。
彼女持ちだと公言して、先輩を立てることに徹しているそうな。
本当かどうか、ぐんちゃんに聞いていいよと言うけれど、ぐんちゃんは嫌いだろう。そんなことで透琉くんを煩わせるようなカノジョは。
透琉くんの言葉を信じるか信じないか、結局は自分の気持ち次第だということはよく分かっている。
「俺だって、心配なんだからねー」
透琉くんが面白くなさそうに言った。
めったに怒らない透琉くんが不機嫌な声を出すのは稀で、どきりとする。
「菜々ちゃんがオフィスラブに誘惑されてないか、すげー心配。社内恋愛ってやっぱ強いじゃん? 毎日顔を合わせてるうちに淡い恋心が芽生えたりとかさあ。アメリカ帰りのイケメン俺様エリート(次期社長)が直属の上司になったりとか。歓迎会で酔った勢いでとか、わざと残業させて手伝って役得とか、そういう奴いない?」
透琉くんの抱く「オフィスラブ」のイメージに目を丸くする。
なんて素敵なオフィスラブ。
「月9に出てきそうだよね。うちの職場じゃ、ナイなあ」
夢を壊してごめんねと謝罪のテンションで見上げると、ほっと柔らかい溜め息が返ってきた。
「良かった。何でも、困ったことがあったら俺に言って。頼りにして。愛してるから」